連載コラム⑪介護コンサルタント高山善文「安心な暮らしのために住み替えという選択」
高齢者の暮らしを取り巻く様々な不安は、本人だけでなく家族にとっても大きな悩みとなっている。多様化する高齢者ホームへのニーズと「住み替え」について考える。
高齢者ホームのニーズの変化
「独居の親の自立生活が困難になってきている」「認知症かもしれない…」最近、私の同年代の友人からこんな問い合わせが増えています。私は現在56歳、親世代は80歳代前半となっています。介護は、対象となる方が持っている疾病や置かれている環境、経済状況などによってすべて異なるため、その方に合わせたケアプランが必要となります。
最近、私の元に「物騒な世の中になり、親が独り暮らしなので、安心のため高齢者ホームに入居してもらいたい」という相談がありました。詳しく話を聞くと、最近その友人の母親の自宅には不審な電話や営業マンの訪問が多くなり、不安を抱えている様子でした。高齢者ホームは「要介護になった時に入居する」イメージがありますが、今後は安心・安全を求めて高齢者ホームに入居したいと考える方々が増えていくかもしれません。
高齢者ホームの選び方
実は、元気な時から入居できる高齢者ホームも数多くあります。公的な特別養護老人ホーム等は、原則要介護3以上でなければ入所できませんが、株式会社等が運営する有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅では、自立、要支援、要介護1・2の方も入居できるホームがあります。在宅生活に関わる不安を感じたら、高齢者ホームへの「住み替え」も一つの手段となります。近年高齢者ホームは、特定の方を対象にしたものが増えてきています。例えば、苦痛を和らげて最期のときを穏やかに過ごしたい方が対象のホスピスや、パーキンソン病に対応した看護サービスを提供するホームなどです。
高齢者ホームを選ぶ際には、ぜひ見学をしてみてください。建物や設備の他に、入居している方々やそこで働いているスタッフの様子から、入居後の暮らしのイメージをつくることができます。見学の際には加えて、ホームに対して「自然災害」や「感染症対策」についてどのような体制を整えているかを質問することもポイントです。
高齢者ホームは、入居する方の「家」となります。同年代の友人から高齢者ホームの相談された時、私は「入居後に後悔しないためにもパンフレット等の情報だけではなく、実際の施設を見学するのが良い」と勧めています。昨今の社会情勢も高齢者のニーズの多様化を促し、高齢者ホームの在り方も少しずつ変わってきています。いま一度、これから先の人生を考える良いタイミングなのかもしれません。
たかやま・よしふみ/1966年生まれ。
介護現場での豊富な経験を基に、介護事業者のコンサルティングを手掛ける。講演や執筆
活動に加え、介護支援専門員、東京都福祉サービス第三者評価者としても活動。ティー・オー・エス株式会社代表取締役。
【主な著書】『これ一冊でわかる!介護の現場と業界のしくみ』(ナツメ社)、『図解即戦力 介護ビジネス業界の仕組みと仕事がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など。
一般の方向けに介護のしくみをわかり易く説明した『介護のしくみチャンネル』をYouTube にて配信している。
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