連載コラム③介護コンサルタント高山善文の「知っておきたい高齢者ホーム選びのポイント」
高齢者のために作られている「家」は少ない
総務省が今年9月に公表した65歳以上の人口は、1年間で22万人増え、3640万人となり、高齢化率(人口に占める高齢者の割合)は29.1%となりました。同月に公表された住民基本台帳に基づく100歳以上の高齢者の総数は前年から6060人増え8万6510人となりました(厚生労働省、令和3年9月14日現在)。日本の多くの住宅は、「段差が多い」「部屋が小さい」「畳を中心とした座式の生活」などの特徴があり、高齢者が住み慣れた家で暮らし続けることを困難にしているともいわれています。これからの時季に気をつけてほしいことが浴室やトイレにおける「ヒートショック」です。厚生労働省の「人口動態調査」によると、浴槽における事故は11月〜4月に多く発生しています。
ひとり暮らしや、高齢者夫婦のみで暮らしている方が自宅での事故や将来の介護に不安を感じ始めた際に検討したいのが、高齢者ホームへの住替えです。
高齢者ホームは、介護が必要なくても入居できる「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」「シニア向けマンション」など多くの選択肢があります。そして、高齢者ホームの多くは、「バリアフリー仕様」「医療・介護職員の常駐」や「他人とのコミュニケーションの機会がある」など高齢者が安心・安全に暮らし続ける設備と環境が整えられています。費用面においても入居一時金が不要なホームや、年金受給額の範囲内で入居できるホームも続々登場しています。
気力・体力が十分なうちに見学をして備える
まだ「介護」とは関係ない、と考えられている方も多くいらっしゃると思います。また、不安はあるものの住み替える手間と予算などを考えると、もう少し先にと考えている方もいらっしゃるかもしれません。実際、病院を退院する際には医療相談室の相談員やケアマネジャーが転院先や施設などに問い合わせをし、受け入れ先を探してくれることも事実です。
しかし、本人や家族が事前に介護施設や高齢者ホームを見学して事前情報を持っていれば、「自らの意思で」施設や高齢者ホームを選択することが可能となります。
日本では現在、新型コロナウイルスの感染状況が小康状態と報道されていますが、今冬は季節性インフルエンザが大流行する恐れがあるとも言われています。今のうちに自分の意志で、介護施設や高齢者ホームを見学し、万が一のときのために備えてみてはいかがでしょうか。
たかやま・よしふみ/1966年生まれ。
介護現場での豊富な経験を基に、介護事業者のコンサルティングを手掛ける。講演や執筆
活動に加え、介護支援専門員、東京都福祉サービス第三者評価者としても活動。ティー・オー・エス株式会社代表取締役。
【主な著書】『これ一冊でわかる!介護の現場と業界のしくみ』(ナツメ社)など。一般の方向けに介護のしくみをわかり易く説明した『介護のしくみチャンネル』をYouTube にて配信している。
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